整形外科が答える!「腰部脊柱管狭窄症」の基礎知識
中高年が発症しやすい「腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)」。しばらく立っていたり歩いていたりすると、太ももやふくらはぎ、すねにかけて痛みが出て、立ち続けることや、歩き続けられたりが困難になります。今回は、その病気について詳しい整形外科医の松平浩先生に解説していただきます。
まずは腰部脊柱管狭窄症セルフチェック!
□太ももやふくらはぎやすねにかけて、しびれや痛みがある
□しびれや痛みはしばらく歩くと強くなり、休むと楽になる
□しばらく立っているだけで、太ももからふくらはぎ、すねにかけて、しびれたり痛くなる
□前かがみになると、しびれや痛みは楽になる
※4つとも当てはまれば腰部脊柱管狭窄症の可能性が強い
腰部脊柱管狭窄症って何ですか?
まず、「脊柱管」とは、脊髄(せきずい)と馬尾(ばび)という神経が通っているトンネルのことです。このトンネルが狭まることが脊柱菅狭窄症です。
原因は、加齢によって腰部の背骨腰椎(ようつい)が変形したり、椎間板が水気を失い出っぱってきたり、椎間関節(ついかんかんせつ)や黄色靭帯(おうしょくじんたい)と呼ばれる背骨の組織が厚くなるとトンネルすなわち脊柱管が狭まる=狭窄症になるのです。
また、背骨の「すべり」や「側弯(そくわん)」といった症状に伴い、脊柱管狭窄症が生じる場合も少なくありません。この脊柱管の狭ばまり程度は、背筋を伸ばした状態のほうが黄色靭帯の厚みが増えることにより強まることがわかっています。ですから立ちっぱなしでいる時や、歩いてしばらく経った時に症状が現れるパターンが典型的です。
一方、シニアの方がX線検査やMRIを撮れば、無症状であっても、「すべり」や「側弯」、そして多少の“脊柱管狭窄”の所見は多くの人に見られます。つまり、症状が出ていない画像上の狭窄がある方は、厳密には「腰部脊柱管狭窄症」とはいいませんので、気にする必要はありません。
坐骨神経痛とは違うの?
坐骨神経とは、腰椎(ようつい)の下の方から出ている神経が束となり、お尻から太ももの裏側を通って延びている神経です。この神経は脳からの指令を脚へ伝えています。坐骨神経の始発駅が下位腰椎(腰骨の下の方)の神経部分(神経根)であり、坐骨神経痛を起こす原因の代表的な原因が、20~40代に起こりやすい「腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニア」とシニア層に多い「腰部脊柱管狭窄症」です。ちなみに坐骨神経痛は病名ではなく、腰痛と同様に症状の名前です。
腰部脊柱管狭窄症の症状と治療法
腰部脊柱管狭窄症の賞状は、立ちっぱなしでいたり、歩いたりすると、左右一方のお尻~足にかけての痛みやしびれ(坐骨神経痛)が出る、しばらく歩くとお尻から下の痛みやしびれが出て歩きにくくなるが、少し休めばまた歩きだせます。これを専門的には「間欠跛行」(かんけつはこう)といいます。座ったり、自転車に乗ったりショッピングカートを押したりすると症状が楽になるというのも特徴です。
ほとんどの腰部脊柱管狭窄症に伴う坐骨神経痛は、症状が出ても適切に対処すれば改善しやすく、怖くはありません。適切な服薬や運動療法などによって改善しますが、以下の症状が出た場合は、早期に手術をしたほうが、人生100年時代を乗り切るために望ましいことがわかっています。
腰部脊柱管狭窄症の代表的な症状
- 左右差は多少あるが、両下肢全体がしびれてくる
- 肛門や性器付近の灼熱感しゃくねつかんを感じる
- 椅子からの立ち上がる力や歩く力が急に落ちてきた
手術の方法は、骨を削って狭窄をなくす以外に金属を使った背骨の固定を加える場合もありますが、近年、安全かつ侵襲の少ない方法が進歩しています。
なお、両足の裏がしびれてきたら、その症状は手術をしても取れにくいことも知っておく必要があります。
どういったお薬が使われるの?
効果が出るまで約6週かかるリマプロスト(オパルモン®などの神経の血流改善薬)を基本とし、痛みが出たばかりの時期は、胃腸や腎機能の具合を勘案しつつ、消炎鎮痛剤が短期的に使われます。
その他、ジンジン・ビリビリする症状が強い場合は、「リリカ®」や「タリージェ®」「サインバイタル®」という神経痛用の薬が選択されます。また、「カロナール®」、「ノイロトロピン®」、「牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)」といった薬が主治医の判断により使われる場合がありますが、運動療法をご自身で積極的に行うことが重要です。
脊柱菅狭窄症に良い運動療法を教えて!
症状が出ている時は、神経根の血流を改善する目的の「膝かかえ体操」を2週間徹底してください。この時期の、自転車エルゴメーター(エアロバイク)での全身運動もお勧めです。
症状が改善したら、再発予防のため、腰回りの筋肉を鍛える「アームレッグレイズ」を習慣化してください。すべり症と側弯症の人は再発しやすいですので日課にしましょう。
その他、胸回りと股関節周りの柔軟性を高めると腰の負担が減り、さらに予防として役立つでしょう。まずは少しずつでよいので、ご自身で計画し行ったメニューを記録すると運動療法の継続に役立ちます。
※松平先生が監修している腰痛セルフマネジメント情報サイト『腰痛ケア.COM』では腰痛に関するさまざまな情報が掲載されています。ぜひ下記のHPを参考にしてみてください。