インタビュー 2021.06.28
職人のカラダ「鍋を振り続ける中華料理人」– 老舗中国料理店『ふんよう亭』主人に訊く —
世の中には、いろんな職業がある。そしてどの職業にも、特有の動きが存在する。仕事が10あれば、10の動きがある。ということは、その動作に付随するかたちで、仕事に従事する人それぞれにカラダの悩みが発生するということでもある。
例えば自転車を毎日漕ぐ競輪選手の太ももは丸太のように発達するし、毎日ろくろを回す陶芸家は、手のひらの皮膚が削れて薄くなる。高温の油やスープを扱う料理人は常に腕が赤く腫れているし、レーシングドライバーの首はGに耐えるために太くなる……といった具合だ。
この連載では、さまざまな人の職業にフォーカスし、その仕事が、カラダにどんな影響を及ぼし、それぞれの人がどうカラダをメンテナンスしているのか、対話形式でご紹介する。
第一回目は東京・荻窪の中国料理店「ふんよう亭」のご主人。戦後まもなくから荻窪の地で愛され続ける老舗の中国料理店で、筆者が大好きなお店の一つでもある。
磨き抜かれた料理の数々は一切のてらいがなく、心に染みるような味わい。まさに唯一無二の名店だ。厨房に立つのは、ご主人・辻 弘(つじ・ひろむ)さんと、奥様の和子さん。今年69歳を迎える辻さんに、料理人としての経験と、体との向き合い方を伺った。