疾患ナビ 2023.09.01

首と肩のこり・痛みは重大な病気の可能性も! 整形外科医が教える改善法とは?

日常的に首や肩がこって痛いという人は多いでしょう。実際に首や肩に痛みを覚えている人は日本に約1000万人いるとも言われています。

近年はスマホやPCの作業が増えた結果、首・肩の痛みに悩まされる人はさらに増加。なかには重篤な病気の可能性も潜んでいます。そこで今回は、さまざまな首の痛みの症状と原因、セルフチェックの方法を整形外科医の竹下克志先生に伺いました。

そもそも首・肩はなぜ痛くなる?

――そもそもなぜ首や肩が痛くなるのですか?

実は人間の頭の重さは約5kgもあります。重いのです。それを常に支えているのが首とその周辺の筋肉です。ここに負担がかかりすぎて疲労が蓄積すると、痛みとなって表れます。

――首や肩がこる主な原因は何なのでしょうか?

首に痛みのある人の9割は、日常的なストレスや姿勢の悪さから生じる筋肉疲労による痛みです。特に近年、スマホが普及したことで、首や肩が疲労しやすい環境になっていると言えます。しかし筋肉の疲労の場合は、正しい姿勢や運動をすることで改善するケースが多く、重篤な病状には結びつきません。

――一般に「首(肩)が痛い」という時、どのあたりを指すのですか?

整形外科上では後頭部から肩甲骨周辺までを含めたエリアを指します。肩こりの「肩」もここに含まれるでしょう。首は小さな骨が連なっており、その周辺をさまざまな筋肉が覆っています。首から肩甲骨までを覆う一番大きな「僧帽筋」、首の付け根にある「後頭下筋群」、頭部を安定させる「頭半棘筋(とうはんきょくきん)」などです。

――具体的に痛みが出るメカニズムは?

筋肉は緊張と弛緩を繰り返して血流を調整しています。筋肉中の血流がスムーズに流れていれば筋肉に十分な酸素が供給され、疲労物質(乳酸など)はたまりません。逆に筋肉の緊張が続くと血管が圧迫され、血流が悪くなります。結果、筋肉への酸素供給が不足し、疲労物質がたまって痛みやこりなどが表れるのです。

どんな生活習慣・タイプの人が首・肩に痛みが出やすい?

――筋肉疲労による首の痛みは、どんな人に起こりやすいですか?

まずは(1)姿勢が悪い人、そして(2)なで肩の人、(3)目が疲れている人。大きく分けるとこの3パターンが一番多いです。

それぞれ解説していきましょう。

(1)姿勢が悪い人

PCやスマホの作業が続くと、背中が丸くなって猫背の状態で頭が前に出た姿勢を続けてしまいがち。すると当然、重心は前にかかり、首にかかる負担が大きくなります。また、いつも肩の片方だけにバッグをかけて過ごしている人も、体のバランスが崩れて首の筋肉が疲れやすくなるので、できるだけ交互に肩を使いましょう。

(2)なで肩の人

なで肩の人は首が長くなり、頭を支える首や肩の筋肉に負担がかかりやすいです。特に女性には「なで肩」の人が多く、月経、妊娠、更年期などのタイミングで痛みが強まることもあります。

(3)目が疲れている人

目と首はとくに近いため、目が疲れると視神経を通して首周辺の筋肉が緊張します。

――どうすれば改善できるでしょうか?

まずは首に負担がかかる生活習慣を改めることが先決です。例えば以下を意識して生活してみてください。

・姿勢を正す。頭が背骨の真上に来るように意識する

・同じ姿勢を続けない。15~30分に1回休憩を取る

・血流を促すため、適度に運動する

・首や肩を冷やしすぎない。夏場はエアコンの当たりすぎに注意

・シャワーではなくお湯に浸かる。体が温まると血行が良くなる

それでも痛みが強い場合は、医療機関で薬物療法や理学療法を行いましょう。

・首の筋肉をもみほぐす

・首の筋肉を温める

・薬物療法(消炎鎮痛剤の湿布や内服、筋弛緩薬の内服、局所麻酔薬などの注射)など

重大な病気が隠れていないかセルフチェックを!

――ほかに注意点はありますか?

首や肩の痛みに手足のしびれを伴う場合は、筋肉の疲労による痛みではなく、頚椎などの異常で神経が圧迫されている可能性も。代表的なのは、頚椎症と頸椎椎間板ヘルニアです。骨と骨の間でクッションの役割をしている椎間板の中にある髄核が飛び出して神経を圧迫すると、痛みとともにしびれが出るのです。

これは放っておくと治療が難しくなり、手術が必要になることもあります。早期発見のためには、まずは下記の要領でセルフチェックしてみてください。

・首を反らすと、首に痛みが起こる

脊髄や神経根が圧迫されている可能性あり

・首を反らすと、痛みとともに腕がしびれる

神経根が圧迫されている可能性あり

・首を前に曲げると、首や背中に痛みが起こる

脊髄が圧迫されている可能性あり

このほか、首や肩の痛みは、感染症や骨へのがん転移、また頭の病気と関連して起こることもあります。例えば眠れないほどの激痛がある、痛みが長引く、高熱を伴う、などの場合は要注意です。整形外科、神経内科、脳神経外科などを受診して、徹底的に調べることが大事です。

竹下克志(たけした・かつし)先生/整形外科医。自治医科大学整形外科教授。脊椎外科、痛み、バイオメカ、アウトカムを専門とする。著書に『そうだったのか!腰痛診療:エキスパートの診かた・考えかた・治しかた』(共著・南江堂)などがある

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