理学療法士が教える!膝が痛い40〜50代が毎日やるべき3分間リハトレ【4】股関節・骨盤周囲の筋力を強化する
膝の痛みに悩まされている中高年世代に多い膝痛は、主に「変形性膝関節症」、「半月板損傷」、「膝靭帯損傷」、「その他(関節リウマチや偽痛風)」などです。
この中で圧倒的に多いのは、変形性膝関節症。膝の軟骨の老化、擦り減りにより、膝に痛みが出ます。国民の4人に1人がかかっていると言われ、高齢になるほど罹患率が高まる、まさに国民病です。
初期症状は歩き始めに痛い、階段の上り・下りで痛い、長く歩くと痛いが、休むと治る、正座ができない、立ち仕事ができないなど。
「加齢とともに膝はどうしても変形していきます。しかし日常的に体を上手く使ったり、正しい姿勢を維持することで、変形が起きたとしても、痛みなく無事に過ごせるようになります」と言うのは、リハビリのプロである理学療法士・福原隆志先生。
そこで今回は、膝痛に悩まされる40〜50代が、毎日自宅でできるリハトレ(=リハビリトレーニング&ストレッチ)を福原先生に伝授してもらいます。先生によれば、膝のトレーニングで重要なのは、ストレッチと筋力強化。
「脚の筋肉をつけて、ストレッチで膝と股関節の可動域を増やすのがポイント。ストレッチで膝の伸びを維持、そして大腿四頭筋、特に大腿直筋・内側広筋の筋力を強化することで、膝の曲げ伸ばしをスムーズにすると、自然と姿勢が整い、膝に痛みが出にくくなります」
狙うべき部位とその理由は次の4つ。
1)膝の可動域を保つ
2)脚の筋力(おもに大腿直筋・内側広筋)を強化する
3)股関節・骨盤周囲の可動域を保つ(おもに大殿筋・中殿筋・腸腰筋)
4)股関節・骨盤周囲の筋力強化する(おもに中殿筋・腹筋群)
第4回目のリハトレは、股関節・骨盤周囲の筋力強化です。
レッスン4 股関節・骨盤周りの筋力強化
前回のリハトレ3日目では、股関節・骨盤周囲の可動域の柔軟性を上げるストレッチを行いましたが、今回の4日目は筋力アップを狙います。対象は〈中殿筋〉と〈腹筋群〉です。
「中殿筋は尻の横側にあり、骨盤と大腿骨を結ぶ、股関節を安定させる筋肉です。主に脚を左右に上げるときに使います。これを鍛えると、骨盤をよりしっかりと支えるようになるので、体のブレが少なくなります。引いては、膝のぐらつきも抑えてくれるのです」(福原先生・以下同)
また、これと同時に、おなかの筋肉である腹筋群も強化すべき部位です。
「腹直筋という、俗に“シックスパック”などと言われるおなかの前面部分、そして脇腹にある内腹斜筋・外腹斜筋・腹横筋。これらは姿勢を維持するのにすごく重要な役割を果たします。しかし椅子などに座りっぱなしだとほとんど使わないので、デスクワークが多い人は弱りやすい筋肉。腰痛や膝痛につながってきます。ぜひ強化しましょう」
中殿筋の筋力強化
1.横向きに寝そべり、両膝下にゴムチューブを通す
2.上側の足は膝を伸ばし、踵からやや後ろに持ち上げる。この時、腰を反らないように注意する。
3.お尻に“えくぼ”ができるのを感じるまで上げる
※踵ではなくつま先から足が持ち上がっていると、体が開いてしまい、お尻にえくぼができにくい。
※これを朝昼晩の3回、ゆっくり10回、両足ともに行う
※ゴムチューブは100円ショップなどで購入可
腹筋群の筋力強化
1.椅子やベッドに腰掛け、背筋を軽く伸ばす
2.膝を上げ、体を捻りながら逆側の肘とタッチする。目線は正面を向けたままにする
3.タッチの瞬間、持ち上げた膝側のお尻を横に持ち上げると、さらに効果アップ
※これを朝昼晩の3回、左右交互にゆっくり10回行う。
(取材・田代智久 イラスト・うえむらのぶこ)
福原 隆志(ふくはら たかし)秋田リハビリテーション学院理学療法学科専任教員、博士(保健学)、認定理学療法士(スポーツ理学療法、臨床教育)
島根県松江市生まれ。群馬県前橋市のクリニックにて臨床経験を積み、成長期の子供から高齢者まで幅広い世代の整形・スポーツ領域のリハビリテーションを行うかたわら、群馬スポーツリハビリテーション研究会の一員とし、地域スポーツで活動する理学療法士の育成に取り組む。2014年より秋田県に移住。秋田市の回復期病院で主に脳卒中のリハビリテーションに関わりながら、秋田県理学療法士会 障がい予防・スポーツ支援班の班長として地域スポーツをサポートしている。2020年より現職。理学療法士養成校の教員として後輩理学療法士の育成に従事しながら、「年齢や障がいの有無に関わらず、スポーツを楽しみながら健康になる地域づくり」を念頭に置きつつ、高齢者の運動教室などを積極的に行っている。趣味は子供達の部活動観戦と、日課である愛犬との散歩。