「五十肩」、本当の病名は「凍結肩」!?

中高年の多くを悩ます「五十肩」。その原因はなんなんでしょうか? ご専門の東北大学整形外科准教授・山本宣幸(やまもと・のぶゆき)さんが教えてくれました。
「五十肩」と言えば、一般の人も理解できる疾患です。外来で患者さんに「あなたの肩痛は「五十肩」が原因ですよ」と説明すると、「そうですか、それならしょうがないですね」という返事が来ることも多い。肩の疾患でこれほど一般人に浸透している病名はありません。
「五十肩」という用語は江戸時代にすでに使われていました。恐らく当時は五十代で肩が痛くなるとこう呼ばれていたのだと思います。なお、日本肩関節学会では「五十肩」という用語は使わず「凍結肩」という用語を使うことを推奨しています。江戸時代では50代で多く見られたようですが、現代ではどうでしょうか?
当院を受診した134人の凍結肩の患者さんの年齢を調べると、やはり50代が最も多く、次いで40代と60代がほぼ同数でした。江戸時代も現在も凍結肩の発症年齢は同じくらいなのかもしれません。
「凍結肩」の原因
ところでこの凍結肩という疾患ですが、原因がよく分かっていません。その病名を見ても、病態は表していないことはすぐにわかります。疑問に思うのは、なぜ、これほど頻度の多い疾患なのに病態解明があまり進んでいないのか?です。
推測ですが、凍結肩で手術になる症例は少なく、ほとんどが薬、注射、リハビリでよくなってしまうからかもしれません。我々整形外科医は手術になる疾患には興味や関心が高いのですが、薬や注射など保存治療で済む疾患には関心が薄いです。
もちろん重症の拘縮に対しては、手術が行われることもありますが、近年は外来で受動術(サイレントマニピュレーションと言われています)も広く行われるようになり、益々手術適応は狭くなってきています。病態が分からないので、病名もピンときません。保険病名に関しては、肩関節周囲炎という病名が使われています。周囲の炎症という曖昧な病名が付けられています。