食べ物の新たな指標! 話題の「AGE」を意識して骨を丈夫に保つ方法
人間だれしも加齢によって、足腰はどんどん弱るもの。
とりわけ、骨がもろく折れやすくなる「骨粗鬆症」や、関節と関節の間の軟骨が擦り減って、関節に変形や痛みをもたらす「変形性関節症」は、高齢になるにつれて増加する症状です。これが発端となって、立つ・歩くなどの移動に支障をきたす「ロコモティブシンドローム(略称:ロコモ)」などになるリスクも。
冒頭から怖い話ばかりで恐縮ですが、将来的にこうした状態に陥らないためにも、普段から運動を習慣づけるなどの予防が何より大切になってくるわけです。
そしてもう一つ、重要なのが食事です。栄養が偏らないようバランスのよい食事を心がけるべきなのは周知の通りですが、実は近年、調理の仕方ひとつで、より骨や関節を丈夫に維持できることが明らかになりつつあるんです。
そのカギを握るのが、いまテレビなどでも取り上げられて話題になっている老化の原因物質「AGE(エー・ジー・イー)」です。一体どんなものなのか、AGEの医学的研究に取り組み、次々と最新データを出している医学博士・山岸昌一先生にお話を伺いました。
AGEって何?
AGEは、「Advanced Glycation End Products=終末糖化産物」の略です。
「血中のブドウ糖が過剰になり、血液中にあふれ出た時に作られるのがこの物質です。血糖値が上がることで、体の中でタンパク質と糖が結びつき、AGEができます」と山岸先生。これが体にたまると、どんなことが起こるのかというと、ズバリ老化が進行すると言われているんです。
AGEが皮膚に多くたまると、コラーゲンが損なわれ、しわ、しみ、たるみができるほか、頭皮の毛乳頭細胞にたまれば薄毛になります。果ては心筋梗塞や脳梗塞、認知症、うつ、白内障、歯周病、がんなどの病気の一因にもなります。
「例えば、同じ年齢でもびっくりするほど若々しい人もいれば、かなり老け込んだ印象の人もいます。この違いを生む要因が、“糖化”という現象。人間の体はほとんどタンパク質でできており、糖をエネルギー源として利用しています。慢性的な高血糖状態が続くと、体中でタンパク質に糖がベタベタとくっつき、体温で温められて焦げつき、AGEが作られるわけです」(山岸先生)
そして冒頭で触れた骨粗鬆症にも、AGEが深く関与していることが、最近の研究でわかってきました。
「AGEは骨を作る細胞(骨芽細胞)を死滅させると同時に、骨を壊す細胞(破骨細胞)を活性化させます。さらに骨をしなやかに保つコラーゲンがAGE化することで、骨がチョークのような脆い状態になってしまうのです」(山岸先生)
では、どのようにして、このAGEの増加を防止すればよいのでしょうか。さらに詳しくご紹介していきましょう。
AGEは調理の仕方で抑えられる!
「AGEは、2つの方法で私たちの体内に蓄積されます。1つは前述したように体内で作られるAGEの蓄積。高血糖状態が長く続く人ほどAGEはたくさん作られてたまります。また、食べ物や飲み物にもAGEが含まれており、AGEの多いものを多く食べ続けていると、どんどん体に蓄積されるのです」(山岸先生)
AGEの蓄積をゼロにはできませんが、食事からとるAGEの量をコントロールすることはできます。つまり、AGEの少ない食事を心がけることで老化スピードを遅らせたり、病気予防につなげられるのです。
山岸先生が監修した『数字でわかる老けない食事 AGEデータブック』には、代表的な料理のAGE値(exAGE)が細かく掲載されていますが、これによれば1日のAGEの摂取目安は、1万5000exAGEとなっています。
調理方法でいえば、高温で揚げたり焼いたりして加熱するよりも、水からゆっくり熱を通していくほうが、AGEが少なく済みます。例えば、食パンを生で食べると49exAGE、トーストは78exAGE、バターをのせて焼くと2434exAGE、といった具合です。
「料理のAGE量は高温で調理するほど増えます。生⇒蒸す・茹でる⇒煮る⇒炒める⇒焼く⇒揚げる――これがAGE量の少ない調理法の順番です」(山岸先生)
とはいえ、生活を送る中で、炒め物や揚げ物を料理して家族に振る舞ったり、自分で口にする機会も多いもの。その際にも、調理方法と付け合せを工夫すれば大丈夫と山岸先生は言います。
「例えば、唐揚げや高温での炒め物をする場合は、あらかじめ肉をレモンやビネガーなどでマリネしてから調理すると、糖とタンパク質の反応が抑えられ、食品中のAGEを半減できますし、キノコ類と一緒に食べると、食後の血糖値を抑えられたり、AGEの吸収が抑えられるなどの作用があります」
ちなみに、緑茶は抗酸化・抗糖化の両方に期待できるので、食後にゆっくり飲むことで、アンチエイジングにもなるそうです。
どう調理し、どう食べるのか――。適度な運動はもちろん、食事の面でもAGEを意識し、それを上手にコントロールすることで、より健康的な未来をつくれるかもしれませんね。
文・甲斐トモオ