コラム 2021.02.05

高齢者の健康寿命を延ばせ! 東京・大田区の「スクワット・チャレンジ」とは? 〜2020年第8回・「運動器の健康・奨励賞」受賞事業〜

「フレイル」という言葉をご存知でしょうか? これは健常と要介護の中間的な状態のこと。海外の老年医学の分野で使用される英語「Frailty(フレイルティ)」が語源で、虚弱・老衰、脆弱などを意味する言葉です。

現在、約8割の高齢者が、このフレイル状態の期間を経て、要介護状態に近づいていくと言われています。つまり今、いかにフレイルを予防し、健康寿命を延ばせるかが問われているのです。そしてフレイル予防に効果的とされているのが、①習慣的な運動、②多様な栄養素の摂取、③活発な外出・社会参加――の3点です。

こうしたなか、東京都大田区で活動する「東京都健康長寿医療センター研究所 社会参加と地域保健研究チーム」では、フレイル予防のために「スクワット・チャレンジ」を2017年から推進しています。周知の通り、スクワットは下肢筋力の強化に効果が高く、高齢者の転倒予防などにも効果的です。また、椅子からの立ち座り運動を繰り返すだけの椅子スクワットでも、下肢筋力の強化につながります。

高齢者にスクワットを習慣づけてもらうべく、事前に地域高齢者とグループワークを行ったところ、「きつそう」「友人とやりたい」「場所がない」「教室はメンバーが固定で入りづらい」などの声が挙がりました。そこで、大田区内の高齢者の集う地域施設7軒に、椅子スクワット運動をカウントするICTシステムを段階的に導入。ICTシステムとは、椅子を利用したスクワット回数を自動的にカウントするシステムで、センサーを仕込んだ座布団と、BLE(Bluetooth Low Energy)で連携したAndroidタブレットと専用アプリケーションで構成されています。

この座布団を椅子にのせ、タブレットをサイドテーブルに置き、アプリケーションを立ち上げ、ユーザーがタブレットを操作して性別と年齢を入力。その後、その椅子を利用して、椅子スクワットを実践することで、タブレット上のアプリケーションに回数がカウントされていきます。スクワット運動の回数は、システム上でリアルタイムに同期され、施設ごとの月ごとのスクワット実践回数に加算され、回数を競うこともできるようになっています。

 

スクワット・チャレンジは、2020年1月現在、継続的に月2万回以上のスクワット運動が実践されるまでに成長しました。ちなみに 2017年6t月〜2020年1月10日現在に至るまでの総スクワット回数は、142万8千523回、総利用延べ人数は9千600人。またインタビュー調査によれば、システムの利用者と、その他の施設利用者同士で、リレー形式で回数を重ねるなどのコミュニケーションも新たに生まれています。

 

 

この記事をSHAREする

RELATED ARTICLE