オンラインシンポジウム『児童生徒等の運動器の健康を守り、学校での重大事故を防ぐために』発表概要
(3)運動器検診での気づきのポイント 脊柱の異常(側わん症)
渡辺航太 学校保健委員
(慶應義塾大学整形外科学准教授)
正常な背骨は正面から見ると真っ直ぐに並んでいますが、「脊柱側弯症(以下、側弯症)」では背骨がねじれるように曲がっています。側弯症は神経や筋肉の病気などのいろいろな原因で起こりますが、その中で最も頻度が高いタイプの側弯症は思春期(10歳~18歳)に発症する「思春期特発性側弯症」で、脊柱が曲がる原因が明らかではありません。その発生頻度は女子が男子の5倍〜7倍で、女子の1〜2%程度といわれています。
側弯症になると脊柱変形の進行に伴い体表面が変形します。さらに変形が重度に進行すると、腰背部の痛みや胸郭の変形による呼吸機能低下を生じる場合があります。しかし、初期の段階では体表変形は目立たず自覚症状も乏しいため、本人も周りの人たちも気付きません。外見の変化が明らかになり自覚症状が出る頃には、側弯症は手術が必要なくらい重度に進行している場合が多いので、治療のタイミングを逃さないためにも早期発見が大切です。
本邦では学校保健安全法により就学時および定期健康診断時に脊柱の異常(側弯症)の検診が義務づけられています。方法は各自治体に任されており、一次検診は校医(一部で養護教員、整形外科医)による前屈テストが簡易な方法のため広く普及しています。そして二次検診あるいは三次検診で病院を受診し、X線写真で診断を確定します。しかし前屈テストの精度は決して高くないため、より客観的で高精度な一次検診の方法としてモアレ法を採用している自治体も多く、さらに近年、多くの側弯症検診機器が販売され、検診の精度向上が望まれています。