コラム 2021.08.05
オンラインシンポジウム『児童生徒等の運動器の健康を守り、学校での重大事故を防ぐために』発表概要
〔第2部〕学校での児童生徒の重大事故と運動器外傷の予防
座長・内尾祐司 学校保健意員会・担当理事
(島根大学医学部整形外科学教授)
(5)コロナ禍での児童生徒の骨折の実態と予防
高橋敏明 学校保健委員会・委員長
(愛媛大学スポーツ健康科学教授)
令和2年1月からCOVID-19感染症が拡大し、日本の学校活動においても令和4月~5月末までに休校の措置が取られた。その結果、学校再開後に体力低下や肥満傾向の増加やバランス不良により転倒しやすいことなど子どもの体にさまざまな変化が生じている。
休校やステイホームによる運動器の健康への影響を探るために、学校の管理下での子どもの骨折状況の調査を実施し、今後の対策について検討した。令和元年及び2年4月~9月までの骨折件数を調べ得たのは小学生では8市、中学生では3市であった。小学生では、令和2年は元年に比べ4~6月には著明に減少していたが、7月以降は変化していなかった。
しかし、過疎地では、6月以降は元年よりも増加しており、休校による運動制限解除後、急に活動性が高くなったため骨折が増加したものと考えられた。小学生の骨折の主な原因は転倒であり、運動不足後のバランス感覚低下などによることが推測された。今後起こりうるパンデミック感染や大災害後に対しての対策を事前に想定し、発生時には迅速かつ適切な対応策を講じることができるように、運動不足に対するトレーニング指導やマニュアルを策定することが必要である。