コラム 2021.08.05
オンラインシンポジウム『児童生徒等の運動器の健康を守り、学校での重大事故を防ぐために』発表概要
(7)理学療法士による児童生徒への運動器外傷の予防教育
板倉尚子 学校保健委員
(日本女子体育大学健康管理センター)

いたくらひさこ 所属:日本女子体育大学健康管理センター <略歴> 2005年:筑波大学大学院体育研究科スポーツ健康システム・マネージメント専攻修了 1991年:東京都立大塚病院勤務 1994年:日本女子体育大学健康管理センター勤務 <取得資格> 理学療法士、鍼灸師、あん摩・マッサージ・指圧師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー <公的活動> 公益社団法人 日本理学療法士協会理事 公益社団法人 東京都理学療法士協会理事
現代の代表的な健康課題の中で、運動器においては、児童生徒の運動・スポーツと身体の二極化が指摘されている。部活動等に代表される過度な運動(練習)による運動器の外傷・障害や、屋外での遊びの減少に代表される運動不足による体力低下や生活習慣病リスクの増大 、発達障害などが挙げられる。
児童・生徒の健康管理において理学療法士の役割は、外傷・障害への対応とその予防、生活習慣の改善(肥満対策)や内科疾患(心臓奇形や腎疾患)の罹患生徒に対する運動処方や病態管理、机・椅子・靴の調整、遊具・運動器具の選択や配置、使用方法などへの助言、運動器検診の事後措置、メンタルヘルスなどが挙げられる。
私たちは、学校安全の観点から産業技術総合研究所と共同研究を行っている。日本スポーツ振興センターのデータから学校におけるケガは跳び箱運動による外傷が最も多いという結果が得られ、分析結果(エビデンス)にもとづいた予防プログラムを作成し、教諭に向けた跳び箱運動の指導を行っている。学校保健は、教育事業の現場である学校における保健事業であるため、理学療法士だけでなく、多職種の方々や、保護者や地域などの一般の方々の関りも必要となる。
子どものころから多職種が関わって健康に対する意識を高くしていくことは、生涯にわたる健康増進となり高齢期における介護予防にまでつなげられる。