運動器ドクターズ Q.膝の水は抜くほどくせになってたまるのでは?
「運動器ドクターズ」では、読者からのよくある運動器のお悩みや相談にについて整形外科医がお答えします。今回は、ランニングが趣味の40代男性から「膝の痛み」に関するこんな質問がきました。
Q.「昨年くらいから膝が痛みだし、趣味のランニングを中断中です。整形外科に通うようになり、そのたびに膝の水を抜く治療を行っています。最近、友人から、膝の水は抜くとクセになると言われたのですが、本当でしょうか?」(神奈川県在住:42歳・会社員)
回答・監修:竹下克志(自治医医科大学整形外科教授)
A.この方のように膝が痛むという患者さんが病院にいらっしゃり、検査した後、その治療の1つに「膝の水(関節液)を抜く」と伝えると「またですか。この間抜いたばかりなのに」とおっしゃる人がいます。
確かに受診の度に膝の水を抜かれるのは患者さんとしては不安になると思います。ですが、膝に炎症があると滑膜が過剰に水を産生してたまっているため、これを抜く必要があるのです。
膝に何度も水がたまるのは炎症がおさまっていないからです。そもそも正常な膝には3㎖くらいの水が存在し潤滑油の役割をしていますが、炎症が起きると20㎖や50㎖以上もたまることがあります。そして、この膝の水を抜いておかないと炎症がおさまりませんので、たまった水は適宜処理をしなければいけないのです。
もし、この膝にたまった水を放置しておくとどうなるのか。たまった水(関節液)の中に含まれる「インターロイキン」という物質が、関節軟骨や靭帯、半月板を破壊し、変形性膝関節症を進行させてしまいます。
また、たまった水が原因で、関節のまわりの組織が伸びてゆるくなり、ぐらつき・不安定が出てきてしまいます。膨らんだ風船を長い間膨らんだままにしておくと、空気を抜いても元の大きさには戻らないのと同じです。
膝に不安定性があると、歩行時に本来と異なる動きが出現するため、膝の軟骨を痛めたりして炎症がさらに悪化しやすくなります。ですから、たまった水は放置せず、すぐに抜いたほうがいいのです。その際、細菌感染にも十分な注意が必要なので整形外科などの専門機関がお勧めです。