亜鉛不足で体はどうなるの?「亜鉛欠乏症」が“文明病”と言われるワケ
亜鉛欠乏はなぜ起こる?
それにしても、飽食の時代と言われて久しい日本で、なぜ亜鉛欠乏が起こるのか、不思議ですよね。
医学会で指摘されているのは、主に孤食・少食・偏食などのいわゆる食事の乱れや糖尿病や腎不全などの影響。そもそも、亜鉛を多く含む食品としては、豚レバーや卵、牡蠣などがよく挙げられます。ならば食事の乱れを正し、亜鉛が豊富な食物をバランス良く摂ればいいのでは? と思うかもしれませんが、問題はそう簡単ではないと倉澤先生。例えば農業・畜産業の変化により、かつては自然に摂ることができた亜鉛が、現代の食物からは十分に摂取できていない可能性があるというのです。
「歴史を紐解けば、古代エジプトやメソポタミアの例をまたず、土壌は洪水が起こるたびに、森林から流れてくる多種多様なミネラルを吸収し、そこで作られる食物を摂ることで、人は亜鉛を含むさまざまな養分を体内に取り込めました。しかも昔は肥料として人糞を撒いていたので、そこからミネラルがほぼ丸ごと回収できた。しかし戦後の日本の畑は、肥料として窒素・リン酸・カリを使うのが主流。亜鉛を含むその他のミネラルは一切考慮されていません。つまり、昔は豊富に土壌に含まれていたであろう養分は、年を経るごとにどんどん減っているはずで、そこで採れた食物を食べても、昔ほどはミネラルや養分を摂取できなくなっているんじゃないか、と私は見ているんです」
加えて、1960年代後半から米国で始まったトウモロコシの大量生産も無視できないとのこと。このトウモロコシが今に至るまで世界中の家畜の飼料として使われているわけですが、50年以上も経てば、意識的に補わない限り、土壌からミネラルは失われていきます。つまりそのコーンを食べる家畜の肉からも、亜鉛が摂れなくなっている可能性がある、というわけです。