背が縮んだという人は要注意!背骨が骨折しているかも?!–脆弱性骨折の恐怖–
「歳をとって背が縮んだ….」というのはよく聞く話です。しかし、そんな人の中に、じつは背骨(椎体)が骨折している人がいるかもしれないんです。骨がもろくなる骨粗鬆症が進行すると、骨はポキっと折れるのではなく、グシャグシャと潰れるように折れるのです。そんな脆弱性骨折について、秋田大学大学院整形外科学講座教授・宮腰尚久先生に解説してもらいました。
お話を伺った方
宮腰尚久さん
秋田大学大学院整形外科学講座教授
脆弱性骨折とは?
脆弱性骨折とは,骨粗鬆症によって骨がもろくなり、わずかな外力で生じる骨折のことで、知らないうちに背骨がつぶれる「椎体骨折」をしたり、ちょっとした転倒で太ももの付け根の大腿骨が骨折する「大腿骨近位部骨折」を起こします。また、転んで手をついただけで手首の骨折「橈骨(とうこつ遠位端骨折」や腕の付け根の骨折「上腕骨近位部骨折」が生じることもあります。
特に、身体を支える背骨や歩くために重要な役割を持つ大腿骨に骨折が生じると、日常の生活に大きな支障をきたしてしまいます。過去に脆弱性骨折を経験したことがある人は、今後も骨折を繰り返す“骨折ドミノ”のリスクが高くなっていますので、すぐに骨粗鬆症の検査や治療を受ける必要があります。
日常生活におけるさまざまな障害
脊骨がつぶれる「椎体骨折」が生じると、立ち上がる時や重い物を持つ時に背中や腰が痛み、徐々に身長が縮んできます。このような椎体骨折を繰り返すと、背中や腰の曲がりがひどくなり、日常の生活にさまざまな障害が生じるようになります。例えば,よくある障害には、高いところに手が届かない、長く立っていることができないため台所仕事ができない、杖や歩行車がないと歩くことができないなどがあります。
また、特に腰が曲がると身体のバランスが悪くなって転倒しやすくなりますが、お腹が圧迫されて胃の内容物が食道に逆流してしまい、胸やけなどを訴える胃食道逆流症が生じることもあります。さらに椎体骨折が悪化すると、背骨の中にある神経が圧迫されて脚がしびれて力が入らなくなったり、排尿のコントロールができなくなることもあります。また、大腿骨近位部骨折が生じると、骨折の瞬間から歩けなくなり、適切な治療が遅れると寝たきりになってしまうこともあります。
生活の質の低下
骨粗鬆症による骨折は、以上のような痛みや日常生活上のさまざまな身体的な障害を引き起こすだけではありません。背中や腰が曲がってしまったために気持ちが落ち込んだり、また骨折をしてしまうのではないかという不安を感じることなどによって、精神的な面でのダメージも引き起こし、骨粗鬆症患者さんの生活の質を低下させます。
生活の質は、骨折を繰り返すことによって徐々に低下していきます。“骨折ドミノ”を断ち切ることは、生活の質を低下させないためにも非常に大切です。