インタビュー 2022.03.03
気鋭の写真家・越智貴雄が義足の人を撮る理由。
パラリンピックを撮る理由
今でもたまに「なぜ障がいのあるアスリートの写真を撮るんですか?」という疑問を投げかけられることがあります。スポーツ写真なら、障がいのないアスリートの写真を撮ればいいのでは? と思う人も少なくないんですね。確かに世界一を目指す、という点では、パラアスリートはオリンピック選手と何も変わりありません。しかしけがやスランプなど、アスリートなら誰もが経験する試練に加え、パラアスリートには、それぞれまた独自の困難があるんです。
例えば胸から下が麻痺している影響で体温調節ができず、自分で汗をかけない選手がいます。練習を見ていたら、体温が上がるたびにコーチに水をかけてもらって体温を下げていました。また、僕の知る別の選手は、トレーニングで懸垂を行う際、車いすごと体を持ち上げていました。より強い負荷がかかり、効率よく体が鍛えられるわけですね。
手足が失われていたり、視覚や聴覚がなければ競技どころか日常生活ですら不便なはずなのに、自分の置かれた状況下で泣き言を言わず、工夫を凝らして練習し、世界の頂点を目指す。そのひたむきな姿に僕は強い魅力を感じます。そして20年以上にわたって撮影させてもらっているうちに、パラアスリートの人たちに、僕自身の世界も大きく広げてもらえた気がしています。