コラム 2022.03.04

片脚のコウノトリを救え! 義肢装具士が挑んだ日本初の義足プロジェクト

公財)運動器の健康・日本協会が行っている顕彰事業「運動器の健康・日本賞」。2022年度に「理事長特別賞」に輝いた「コウノトリ義足プロジェクト~人間も動物も健康に暮らせる環境へ~」(神戸医療福祉専門学校三田校義肢装具士科4年制)ついて紹介します。

「コウノトリ義足プロジェクト~人間も動物も健康に暮らせる環境へ~」は、罠で片脚を失ったコウノトリの命を救うため、2021年、日本初のコウノトリ義足プロジェクト。実際にコウノトリの義足を製作した義肢装具士・川上紀子さんに動物の義肢装具作りの難しさを聞きました。

 トラバサミという狩猟用の罠がある。触れると強力なバネが作動し、動物の手脚を挟んで捕獲する。野生動物はもちろん、犬や猫、時には人に至るまで、無差別に大けがを負わせる危険性から、鳥獣保護法で原則禁止されている罠である。2021年1月、兵庫県稲美町のため池で、この違法なトラバサミにかかり、左脚の膝から下を失ったメスのコウノトリが発見された。

 ご存じの通り、コウノトリは日本では1971年に野生種の絶滅が確認されたものの、人工繁殖に成功し、徐々にその数を増やしつつある国の特別天然記念物だ。ちなみに2021年8月時点で確認された日本のコウノトリの数は268羽だという。

 怪我を負ったメスは1歳で、兵庫県立コウノトリの郷公園で保護された。同施設はコウノトリを保護増殖し、野生復帰を実践する日本を代表する研究機関である。衰弱していたコウノトリは、獣医師らの手厚いケアにより徐々に回復。しかし最大の問題は失われた左脚だった。同施設の獣医師が義足作りに苦労しているとのニュースを知り、協力を申し出たのが、今回お話を伺った神戸医療福祉専門学校三田校の義肢装具士・川上紀子さん(30歳)らの教員グループ。

「コウノトリの苦境を聞いて、幼少期に飼っていた愛犬ミミの姿が蘇りました。ミミは交通事故で後ろ足が動かせなくなり、犬用の車椅子が体に合わず苦労して亡くなりました。私が義肢装具士を目指したのは、ミミのために快適な義肢を作りたい、との思いがきっかけ。どうしてもコウノトリを救ってあげたかったんです」と川上さん。

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