コラム 2022.11.30

運動器のリレーエッセイ 「テニスでイキイキ長生き!」丸毛啓史(学校法人慈恵大学理事/東京慈恵会医科大学 特命教授)

 本年8月18、19日の日程で群馬県高崎市において開催された第49回全国中学テニス選手権大会女子団体戦を観戦しましたが、レベルの高さに驚かされました。とくに、上位校の主力選手同士のシングルスの戦いは、フォア、バックハンドストロークともに強打の連続で、エースを多く取ったほうが勝つといったプロさながらの試合でした。私がテニスを始めた1967年当時とは隔世の感があります。

 振り返ってみますと、テニスのプレースタイルは、ラケットとコートサーフェスの変化、とくにラケットのハイテク化に大きく影響されてきました。1970年代にラケットは木製からメタル、カーボンなどの人工素材製へと進化し、近年では時速200kmを優に超えるサービスを生み出しています。こうしたラケットを使って速い球を相手コート内に打ち込むためには、ボールにトップスピンをかける必要があります。また、強いトップスピンのかかった速いボールをボレーで打ち返すことは容易ではありません。このため、多くのプレーヤーがベースラインから前に出ようとはせずに、対戦相手と長いラリーを続ける守備的なプレースタイルを選択しています。かつて最高のネットプレーヤーと称されたジョン・マッケンローのような攻撃的なサーブ&ボレーは見かけなくなりました。こうしたプレースタイルは、コートサーフェスの変化と相俟って、選手の足腰や肩・肘・手関節に大きな負荷がかかるためにケガの誘因になっています。とくに成長期の子供たちが運動器の障害をきたさないように、適切な予防体制を構築する必要があります。

 近年、テニスに関して興味深い論文(Mayo Clinic Proceedings, 2018)が発表されました。デンマークのコペンハーゲン市が25年以上にわたって蓄積した市民の生活習慣に関するデータから、被験者の教育、社会経済的地位、年齢等を調整し、条件にあった8577人を抽出して分析しています。その結果、テニスを長期的に続けている人の寿命は、全く運動をしない人と比べて平均で9.7年も長く、他の運動による寿命延長効果をしのぐと結論づけています。ちなみに第2位は、バドミントンで6.2年です。

 私は大学を卒業してからは、テニスをすることはほとんどありませんでしたが、2020年夏から2-3回/月の頻度で再開しました。最初の頃は15分ほどのラリーで息が上がり、気持ちが悪くなるような状況でしたが、現在では真夏に2時間プレーしても翌日に寝込むようなこともなくなりました。あまり無理をすると寿命が延長するどころか、縮まることにもなりかねませんが、今はテニスを始めた頃のようなわくわくした気持ちで、週末を心待ちにしています。

文・丸毛啓史(運動器の健康・日本協会 理事長)

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