コラム 2023.03.07

運動器のリレーエッセイ「Let’s Walk!」松田 秀一(京都大学大学院医学研究科 感覚運動系外科学講座 整形外科 教授)

 皆様は毎日どのくらい歩かれているでしょうか? 昔は万歩計(古い!)でしたが、最近はスマートフォンでいつのまにか計測してくれています。私は車で通勤している時は、病院内で歩く程度ですので3,000~5,000歩程度でした。少ないですよね。

 3年前、COVID-19のパンデミックにより時間にも少し余裕が出てきたこともあり、通勤を徒歩に変えてみました。病院まで約3kmの道のりを35分程度で歩いて行きます。歩いてみると、今まで気づかなかった季節の変化などが感じられて、とても新鮮な感じがしました。

 日本人は平均するとどのくらい歩いているのでしょうか? 平成9年度国民栄養調査では男性8,202歩、女性7,282歩でした。結構多いなと思いました。しかし、平成30年度の調査では男性6,794歩、女性5,942歩と、かなり減少傾向にあります。70歳以上になると男性5,053歩、女性4,317歩と非常に少なくなり、個人差も大きいことからほとんど歩いていない方もいらっしゃるでしょう。

 ではどのくらい歩くべきでしょうか。下肢機能を維持するためには3,000〜6,000歩で良いようですが、歩数と生命予後に関する研究も多くなされており、最近発表された研究結果においては1日8,000〜10,000歩くらい歩くと長生きすることが示されています。みなさん是非たくさん歩きましょう!

 病院で診察していると、歩きたいけど膝が痛いので歩けない、と患者さんから言われることもよくあります。年齢とともに関節軟骨がすり減る「変形性ひざ関節症」という病気がありますが、「変形性ひざ関節症」の患者さんでも長く歩くことでひざの状態は悪化しないとされています。それだけではなく、歩くことで症状はむしろ良くなることが知られており、歩行のような負担の少ない運動を定期的に行うことは治療法の一環として勧められています。しかし、ひざが悪い人が急に長く歩くと痛みがでることもあります。15分以下であれば痛みが出にくいというデータもありますので、短い時間から始めていくことが大事でしょう。

 継続して歩く。これも難しいことですが、楽しいことに絡ませていければいいですね。景色を楽しむ、買い物に行く、ひとそれぞれ違った楽しみがあると思います。私は新しい音楽をダウンロードして聴きながら歩いています。しかし、ヘッドホンをノイズキャンセルにして大きな音で聞いていたら自転車に轢かれそうになりました!それ以降、音は小さめ、周囲の音も入るように設定しています。皆様も足元、耳元には気をつけてたくさん歩いていきましょう。

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