特集 2023.09.01

【親&指導者必読】子どもの「野球肘」を防ぐために知っておくべき基礎知識8選

野球少年が、大好きな野球で故障やケガをするのはとても残念なこと。その中でも、とくに重症化しやすく、将来に影響を残しやすいのが「野球肘」です。今回は、子どもも親も指導者も知っておくべき「野球肘」のメカニズムと対策法を、日本整形外科学会スポーツ医の前田周吾さんに教えてもらいます。

【1】「健康なひじ」とはそもそもどんな状態?

ひじとは、上腕骨・前腕の橈骨(とうこつ)・尺骨(しゃっこつ)という3つの骨が靭帯でつながっている関節部分です。運動機能としては、曲げ伸ばし(屈曲・伸展)や回旋運動(回内・回外)をつかさどっています。

肩の関節と手の関節の中間地点にあり、その2つの関節と連動して、物を持ち上げたり、投げたり、押したり、振り回したり、叩いたり、引っ張ったりなど、複雑な動きができます。これらの動作からわかるように、ひじはスポーツだけではなく日常生活でとても重要な役割を果たしているのです。

 ひじが健康な状態とは、こうしたさまざまな動作が痛みなくできること。それに加え、動かせる範囲(可動域)が左右同じであることも重要です。

【2】野球少年の「野球肘」とは?

「野球肘」は野球少年のなかでも、ピッチャーに多い症状です。その理由は、野球肘になるきっかけが投球動作にあるからです。ボールを投げる時、ひじの内側は自分の体重以上の力で引っ張られて緊張し、ひじの外側は体重の3分の2以上もの大きなストレスがかかるのです。

そもそもひじは体重を支えるような強い関節ではないので丈夫ではありません。さらに成長期の小中学生の骨の先端は、骨を成長させる骨端線(こったんせん)と骨端核(こったんかく)があり、その先には成長過程の骨端軟骨(こったんなんこつ)があります(イラスト参照)。

これらは非常に弱くてもろいため、その時期に繰り返しストレスがかかると、骨端軟骨が傷ついたり、はがれたりといったトラブルに。これがいわゆる「野球肘」と呼ばれる傷害なのです。

【3】野球肘には「内側」「外側」「後方」と3つの種類がある

「野球肘」とひとことで言っても、前述の通り、投げる動作によりひじの内側と外側に加わる力が異なるため、痛みのある場所によって状態やその後の経過、治療方法も変わってきます。

まず、親指を外側にして両手を開いてみてください。体幹側にあるのが内側、体の外側にあるのが外側、背中側にあるのが後方です。ここでは、ひじの内側に痛みがあるものを「内側の野球肘」、ひじの外側に痛みがあるものを「外側の野球肘」、ひじの後ろに痛みがあるものを「後方の野球肘」とします。

ひじが痛いと訴える野球少年のほとんどが内側の野球肘で、その次に多いのが外側の野球肘です。発生頻度は少ないものの、重症化すると大きな問題に発展しやすいのが外側の野球肘なのです。

【4】「内側の野球肘」は休養と投球フォームである程度改善できる

内側の野球肘の場合、「なんだかひじが変」といった程度の違和感から始まります。練習後、しばらくするとその違和感が消えることが多いため放置しがちですが、そのまま投球を続けると徐々に痛みが出てきます。

これは肘の内側の靭帯によって、骨端が繰り返し強く引っ張られることが原因で、骨端軟骨の傷が深くなってきた証拠。この時点で一時的に投球を休むことでひじの痛みはなくなり、またボールを投げることができるようになります。

しかし、ひじに負担が大きな投げ方をしている場合は再び痛みが出始め、これを繰り返すことになります。なので、子どものうちからひじに負担が少ない投げ方を身につけることが重要です。

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