腰の痛みやしびれの原因は、じつは加齢による背骨の衰え。その解決策とは?
加齢による脊椎の変性を予防するには?
じつは、事故による背骨のトラブルも、加齢変性による背骨のトラブルも予防するのは困難なのです。骨を丈夫にする骨粗鬆症予防ができたとしても、「骨にトゲができないようにする」、「椎間板が潰れないようにする」などの加齢変性は、現段階では医学的に予防ができません。
つまり、背骨(脊椎脊髄)の加齢変性は避けられず、症状が出たらそれを緩和する薬の治療や手術しかないのです。
とくに手術は、良いタイミングで行えば機能回復が十分に可能です。ただし遅れると機能回復が思わしくないということもあります。ですから「早期発見、早期治療、早期手術」がとても重要なのです。
脊椎脊髄は「健康寿命」の要
我々の現代の平均寿命は、70年前に比べると30年余り長くなっています。つまり、昔より骨や軟骨といった運動器を長く使い、耐用年数以上使いすぎた結果、骨の棘ができたり、軟骨がつぶれたりなど、昔にはなかった運動器の変性が起きているわけです。皮肉なもので、寿命は延びたけれど、運動機能を司る組織は相対的に弱くなったのです。
そこで、現代の医学は、「いかに寿命を延ばすか」よりも「いかに動けるようにするか」が大きな課題になったのです。その要とは手足の動きを司る「脊椎脊髄」だとも言えます。
先に述べたように、脊椎脊髄の外傷や病気は、ほぼ予防ができませんから、「早期発見、早期治療、早期手術」に尽きます。しかし、本当に大事なことは、「動く」ことなのです。「足腰が痛いから動けない」と言って、じっとしていれば、体力が落ちて老化を早め、カラダ全体の運動器が衰えてますます動けなくなります。ですから、足腰の痛みやしびれなどの症状が出たら、迅速に整形外科を受診し、できる限り脊椎脊髄の機能を早く回復させることです。まずは「動けること」を第一の目標にして、積極的に治療を進めるようにしてください。
ちなみに、高齢者に多い「腰部脊柱管狭窄症」は、症状が出たばかりの人に最初に行う治療法としては、服薬です。血流をよくする薬で、圧迫された腰の神経の血流をよくし、神経の環境を改善して、足の症状を緩和させる方法です。ブロック注射の治療法もあります。神経を一時的に麻痺させて血流を改善させます。
こうした方法で効果が見られず、また、症状がかなり進行しており、5分も歩けないという人や麻痺が強いなどがあれば、早めの手術をお勧めします。手術を怖がる人も多いのですが、腰部脊柱管狭窄症の場合、8~9割の人が手術で機能回復できるのです。繰り返しますが、動くことを一番の目標にすることがとても大事なのです。