トップアスリートにも起きやすい「疲労骨折」。鍛えているのに骨が折れてしまう? その原因と対策とは?【前編】
ようやく暑さも一段落し、いよいよ「スポーツの秋」到来です。今年はWBCに始まり、バスケットボールやラグビーのW杯も開催され、何かとスポーツが盛り上がっていますね。読者のなかにも、これから運動やスポーツに取り組もうと考えている人もいると思いますが、そこで気をつけたいのがケガです。スポーツ中のケガには、捻挫や打撲などいろいろありますが、とくに大きなケガといえば骨折。
といっても、今回取り上げるのは、事故的に骨が折れるボキッと折れる骨折ではなく、骨に疲労が溜まって起きる骨折です。実はこの骨折、ある特定の人に起きやすい骨折といわれています。そこで、「疲労骨折」に詳しい整形外科医の石橋恭之先生にお話を伺いました。
疲労骨折とは何か?
「疲労骨折は、いわゆる交通事故などで起きる骨折とは違います。一般的な骨折の場合は、外部からの大きな力が一気に骨に加えられ、ポキンと折れますが、疲労骨折は走る、跳ぶなど、自分自身の動作で繰り返し加わる小さな力で骨にヒビが入ったり、ヒビが悪化して完全に骨折になったりするものです」(石橋先生・以下同)
その状態を例えると、針金やスプーンなどに、繰り返し力を加えると、ある瞬間、ポキンと折れてしまう“金属疲労”に似ていると先生は言います。
「私は主に整形外科のスポーツ外来が専門なのですが、そこに来る患者さんの1割近くが疲労骨折です」
つまり、疲労骨折はスポーツをする人に圧倒的に多い骨折だと言えます。例えば、走るという小さな跳躍運動を繰り返すマラソンランナーや、繰り返し大きなジャンプをするバレーボールやバスケットボール選手などに起きる骨折が、代表的な疲労骨折です。
「それ以外に、例えば野球選手の場合、塁間を走る途中で足関節のくるぶしの疲労骨折をする選手もいます。つまり、特定のスポーツだから起きるわけではなく、どんな競技にも起きる可能性があるのです」
ちなみに、骨折には「脆弱性骨折」というタイプがあります。これは骨が何らかの病気で脆くなっている人(例えば骨粗鬆症や関節リウマチの人)に起きやすい骨折ですが、疲労骨折は、もともとスポーツをする健康な人の骨にも起きてしまう骨折なのです。