トップアスリートにも起きやすい「疲労骨折」。鍛えているのに骨が折れてしまう? その原因と対策とは?【前編】
疲労骨折が起きやすい部位は?
陸上、サッカー、バスケ、バレーなど“走る・跳ぶ”という動作が多いスポーツは下肢に起こることが多く、体操や野球、テニスなど道具を使うスポーツは下肢だけでなく上肢を疲労骨折することも。つまり、疲労骨折が起きやすい部位は千差万別だと石橋先生は言います。
では、疲労骨折の自覚症状はあるのかというと、実は、“痛い”と自覚症状がある場合とない場合があると石橋先生。
疲労骨折は、同一動作を繰り返すことによって、徐々に骨の微細構造が崩れていって、最終的に骨が折れます。実はその一連のどの状態も“疲労骨折”と呼ぶのです。ボキッと折れるのも疲労骨折、ヒビが入るのも疲労骨折。
「さらにまだヒビが入っておらず、熱を持っているだけの初期の段階では、痛みがあってもX線には映りませんが、これも疲労骨折です。また、ヒビが入っても痛みを感じない人もいます。これが疲労骨折の厄介なところです」
痛みを感じないと、そのまま運動を続けてしまい、最終段階の完全骨折に至ってしまう……これが疲労骨折の怖さなのです。
疲労骨折を招く人と環境がある
トップアスリートといえば、野球の大谷翔平選手など、強靭な肉体を持つスポーツ選手を思い浮べる人が多いでしょう。しかし、そんなトップアスリートほど繰り返しハードな練習をするため、疲労骨折が起きやすいと言えます。
「疲労骨折をしやすいのは同じ動作を繰り返すスポーツと言いましたが、それはほとんどの種目に言えます。なかでも、疲労骨折しやすいのは、女子のアスリート。階級のある種目や審美系の競技、陸上選手などは減量などの体重減少によって、無月経になったり、栄養不足になったりするので、疲労骨折を起こしやすいのです」
また、疲労骨折をしやすい時期は、試合前に練習量が増える時、そして練習環境がガラッと変わる時だと石橋先生は言います。
「小学生から中学生、中学生から高校生になった時などは、同じスポーツでも練習内容やトレーニングの強度が変わるので、疲労骨折が多発します。また、一定期間、スポーツをしていなかった浪人生が大学に入って急に運動を始める場合なども同じです。運動環境の変化は疲労骨折につながりやすいので、特に注意が必要です」
【後編】に続く
「Moving」vol.30より抜粋
石橋恭之先生/弘前大学整形外科学教授。日整会専門医、日体協・日整会スポーツドクター、日本整形外科スポーツ医学会理事、JOSKAS理事、日本バイオメ カニクス学会理事等。共著に『パーフェクト疲労骨折』(金芳堂)がある。