コラム 2023.10.20

食事制限すると体に深刻なダメージが蓄積されている?! 栄養学のプロに訊いた正しい「ダイエット」法とは?

正しいダイエットとは?

  じゃあ、どうやって痩せればいいの? と思われるかもしれませんが、先ほどもお話したように、体重が〈食べるエネルギー〉と〈使うエネルギー〉のバランスで決まるとすれば、後者を増やせばいいのです。痩せるというより、太らない体に作り替えていく。これが本来の正しいダイエットです。

   ウォーキングやランニングで体脂肪を減らしつつ、筋トレをして筋肉をつけるのがオススメ。筋肉がつくと、体はその筋肉を維持するために積極的にエネルギーを使おうとします。すると代謝が上がり、食べても太りにくい体になるわけです。ちなみに、筋肉は年齢に関わらず、鍛えればつきます。

1日に必要な食事を3等分して食べる

  そして何より大事なのは、毎日、食事を3食とることです。これが実はダイエットを成功させるための早道なのです。

   とはいえ、毎日きっちり決まった時間でなければダメということはありません。多少、ズレてもいいんです。とにかく、体に必要なエネルギーと栄養素を、3等分で食べるのが大切です。

   ふだん朝食を食べない人などは、「それなら一日に必要な栄養素を2回(昼・夜)に分けてとってもいいのでは?」と思うかもしれませんが、それはオススメしません。

   食事回数を減らすと、空腹時間が増えます。すると人間の脳は、体が飢餓状態だと認識し、脂肪を過剰に蓄積しようとします。つまり太りやすくなるのです。例えば、大相撲の力士の食事は、伝統的に一日に2回です。なぜなら、それが力士にとって重要な“太るための食事”の仕方だからです。

   そして3食中、とりわけ重要なのが朝食。朝は忙しいし、ちょっと何かをつまむだけ、という人も多いでしょうが、本来は朝の食事を多めにすべきなのです。朝にとった食事のエネルギーは、一日を元気に過ごすために重要な役割を果たすと同時に、一日のなかでしっかり消費されるので、太りにくいんです。

   特に卵や乳製品など、タンパク質をしっかりとっておきたいですね。最新の研究では、1日のタンパク質摂取量が同じ場合、3食のなかで、朝にタンパク質をとったほうが、筋量を増やしやすいということがわかっています。

  最近は、加齢による筋力の低下や骨粗鬆症などで運動器の機能が低下し、寝たきりや要介護状態に陥る、いわゆる「ロコモティブシンドローム」が問題になっています。こうした状態にならないためにも、しっかり朝食にタンパク質をとりましょう。

(取材・田代 智久)

上西一弘(うえにし・かずひろ)/女子栄養大学栄養学部教授。専門はヒトのカルシウムの吸収・利用に関する研究、成長期のライフスタイルと身体状況についてなど。また、スポーツ選手の栄養指導も行う。著書に『栄養素の通になる』(女子栄養大学出版部)などがある。

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