理学療法士が教える!膝が痛い40〜50代が毎日やるべき3分間リハトレ【3】股関節・骨盤周囲の可動域を保つ
膝の痛みに悩まされているシニア層は多いと思います。中高年世代に多い膝痛は、主に「変形性膝関節症」、「半月板損傷」、「膝靭帯損傷」、「その他(関節リウマチや偽痛風)」などです。
この中で圧倒的に多いのは、変形性膝関節症。膝の軟骨の老化、擦り減りにより、膝に痛みが出ます。国民の4人に1人がかかっていると言われ、高齢になるほど罹患率が高まる、まさに国民病です。
初期症状は歩き始めに痛い、階段の上り・下りで痛い、長く歩くと痛いが、休むと治る、正座ができない、立ち仕事ができないなど。
「加齢とともに膝はどうしても変形していきます。しかし日常的に体を上手く使ったり、正しい姿勢を維持することで、変形が起きたとしても、痛みなく無事に過ごせるようになります」と言うのは、リハビリのプロである理学療法士・福原隆志先生。
そこで今回は、膝痛に悩まされる40〜50代が、毎日自宅でできるリハトレ(=リハビリトレーニング&ストレッチ)を福原先生に伝授してもらいます。先生によれば、膝のトレーニングで重要なのは、ストレッチと筋力強化。
「脚の筋肉をつけて、ストレッチで膝と股関節の可動域を増やすのがポイント。ストレッチで膝の伸びを維持、そして大腿四頭筋、特に大腿直筋・内側広筋の筋力を強化することで、膝の曲げ伸ばしをスムーズにすると、自然と姿勢が整い、膝に痛みが出にくくなります」
狙うべき部位とその理由は次の4つ。
- 膝の可動域を保つ
- 脚の筋力(おもに大腿直筋・内側広筋)を強化する
- 股関節・骨盤周囲の可動域を保つ(おもに大殿筋、中殿筋、腸腰筋)
- 股関節・骨盤周囲の筋力を強化する(おもに中殿筋・腹筋群)
第3回目は股関節・骨盤周りの可動域を保つためのリハトレです。
レッスン3 股関節・骨盤周囲の可動域を保つ
リハトレの2日目は、脚の筋力強化のためのトレーニングを行いました。これは膝を守るために、まずはちゃんとした姿勢で立てるようにすることを目的としていました。
3日目は、その筋力強化と並行して、股関節・骨盤周囲の可動域の柔軟性を上げます。可動域を保持するには、ストレッチが有効です。
「狙うべき筋肉は、〈大殿筋〉、〈中殿筋〉、そして〈腸腰筋〉。これらは股関節の安定に大きく関わっています。加齢とともに筋力が低下していくと、骨盤周りが不安定になり、これが膝のぐらつきにもつながって、膝痛を引き起こすのです。例えば、片足立ちになったときにフラフラする人は、骨盤周りや体幹部の筋肉が弱っているか、硬くなっています」(福原先生)
1・股関節・骨盤周りの可動域を保つ:大殿筋・中殿筋のストレッチ
1.椅子やベッドに座る
2.片足を逆の足の太ももに置く
3.背筋を伸ばし、骨盤を起こす
4.そのまま体をゆっくり前に倒す(目線は落とさず顔は上げたまま)
※これを朝昼晩の3回、ゆっくり10秒かけて行う
2・股関節・骨盤周りの可動域を保つ:腸腰筋のストレッチ
1.うつぶせで寝る
2.この状態から両手を床につき、上半身を起こす。その後、手の位置と同じくらいを目安に片足をゆっくり前に出す
3.股関節を膝に押し付けるイメージでゆっくり体を起こしていく(股関節の付け根が伸びる感覚があるとよい)
※これを朝昼晩の3回、ゆっくり10秒かけて行う
※腹筋に力を入れながら行うと効果アップ
(取材・田代智久 イラスト・うえむらのぶこ)
福原 隆志(ふくはら たかし)秋田リハビリテーション学院理学療法学科専任教員、博士(保健学)、認定理学療法士(スポーツ理学療法、臨床教育)
島根県松江市生まれ。群馬県前橋市のクリニックにて臨床経験を積み、成長期の子供から高齢者まで幅広い世代の整形・スポーツ領域のリハビリテーションを行うかたわら、群馬スポーツリハビリテーション研究会の一員とし、地域スポーツで活動する理学療法士の育成に取り組む。2014年より秋田県に移住。秋田市の回復期病院で主に脳卒中のリハビリテーションに関わりながら、秋田県理学療法士会 障がい予防・スポーツ支援班の班長として地域スポーツをサポートしている。2020年より現職。理学療法士養成校の教員として後輩理学療法士の育成に従事しながら、「年齢や障がいの有無に関わらず、スポーツを楽しみながら健康になる地域づくり」を念頭に置きつつ、高齢者の運動教室などを積極的に行っている。趣味は子供達の部活動観戦と、日課である愛犬との散歩。