コラム 2023.10.27

“ごはんの代わりにビール”はアリなのか? お酒を飲み過ぎると太るワケ

「僕は(私は)お酒が好きだから毎日飲む。その代わり、飲むときはごはんは食べない」

 上記のようなことを、聞かれもしないのに力説する人をよく見かけます。

 この言説の意図するところは、お酒とごはんのカロリーはほぼイコールなので、それを同時に摂っていない僕の(私の)体重は変わらないのだ、または決して不摂生をしているわけではないのだ、というアピール。つまり、しばしば酒飲みが酒を飲むために使う言い訳の一つです。

 しかしこれは若干、というか大いに怪しい言説だと推測できます。というわけで今回は、女子栄養大学で栄養学部の教授を務める上西一弘先生に、“ごはんの代わりにビール”は本当に太らないのか、実際のところを伺いました。(以下、上西先生談)

お酒は種類を問わず高カロリー

 私の周りにも「ビールを飲む代わりにごはんは食べない」と言う人がいますが、まぁ、両方摂るよりマシだね、という程度でしょうか。

 タンパク質と炭水化物(糖質+食物繊維)は1gあたり4kcal、脂肪は1gで9kcalあります。脂肪が高カロリーなことはみなさんご存知だと思いますが、アルコールは1gあたり7kcalもあるんです。つまりタンパク質と炭水化物よりも高い。

 例えば中ジョッキ1杯のカロリーは約200kcal。これはごはん120g(茶碗に軽く一杯)のカロリーに相当します。なんだ、大したことないじゃないか、と思うかもしれませんが、お酒好きの方はよくおわかりでしょうが、中ジョッキ1杯でピタッと飲むのを止める人はほとんどいませんよね。これが問題なのです。

 そもそも、お酒は肝臓に負担をかけることもありますが、ひとたび飲みすぎると、予想以上にエネルギーを摂取しすぎてしまうのがポイント。例えば、ビアガーデンなどでビールをガンガン飲んでいると、平気で1000kcalくらい行きます。フライドポテトやから揚げなど、揚げ物をつまみにしたらさらに高くなるでしょう。

 ちなみに、ビールなどの醸造酒はダメだけど、焼酎やウイスキーなどの蒸留酒ならいいんじゃないか、と思っている人もいるかもしれませんが、それはプリン体の多寡の話であり、カロリー摂取に関して違いはありません。アルコールはアルコール。お酒のアルコール分がそのままエネルギーになるので、お酒の種類を問わず、飲みすぎれば太るのです。

(取材・田代 智久)

上西一弘(うえにし・かずひろ)/女子栄養大学栄養学部教授。専門はヒトのカルシウムの吸収・利用に関する研究、成長期のライフスタイルと身体状況についてなど。また、スポーツ選手の栄養指導も行う。著書に『栄養素の通になる』(女子栄養大学出版部)などがある。

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