レスリング世界王者・成國大志さんに聞く「ギリギリまで自分を追い込む方法」とは?
日本人初の“二刀流”王者を目指して
実は僕、いまが一番、レスリングが好きなんです。これは、所属するMTX GOLD KIDSで、指導者としてキッズたちの育成に携わるようになったのも大きいですね。現役選手と指導者、2つの視点を持てるようになったことで、より客観的かつ俯瞰的にレスリングと向き合えている気がします。
例えば、他の選手の練習や試合での動きを見ることで、自分のトレーニングの振り返りもできますし、教えることで自分も学びがある。一人で自分のためだけにレスリングをしていた時より、グッと幅が広がったと思います。やればやるほど、知れば知るほどレスリングが面白い。今はそんな時期ですね。
子どもたちの指導が終わるのは大体いつも夜8時半。そこから自分のトレーニングを1時間半〜2時間ほど行います。練習時間だけ見ると短いように見えるかもしれませんが、僕はこの時間ですべての力を出し切る練習をしているので、十分なんです。
それに、自分を限界まで追い込む才能だけはあるんです。たまに一人で軽く失神してるときもありますよ(笑)。逆に言えば、長時間やれるトレーニングというのは非効率的だし、集中もできていないと思うんですよね。
僕がなぜここまで自分を追い込めるのかというと、ハッキリとしたゴールを見据えているからだと思います。ご存知のように、レスリングには、フリースタイルとグレコローマンという2つのスタイルがあります。僕の目標は、この2つのジャンルで世界チャンピオンになること。いわば“二刀流”ですね。これはまだ日本の男子レスリング界では誰も成し遂げていません。
昨年(2022年)、セルビアの世界選手権男子フリースタイル70kg級で優勝し、フリースタイルのほうでは夢を叶えました。今度はグレコローマンでの世界制覇を目指し、さらに自分のレスリングに磨きをかけていきたいと思っています。
(取材・文◎田代智久)