特集 2024.03.26

天気が崩れると痛みが強くなるのはなぜ? 【痛みと天気の対処法】愛知医科大学 医学部 疼痛医学講座客員教授 佐藤 純

痛みと天気の関係

 

 古くから、「膝がシクシク痛んできたら明日は雨が降る」というように、天気が崩れてくると古傷やいろいろな痛みが強くなったりすることが知られています。

 実際に、愛知医科大学疼痛医学講座がおこなった大規模アンケート調査では、身体の何れかの部位に慢性的な運動器の痛み(筋肉痛、腰痛、関節痛、肩こりなど)がある人のうち,天気が崩れるときに痛みが悪化すると回答した人が約25%もいました。また国外の研究でも、関節炎や神経痛の痛み、頭痛、肩こり、関節リウマチ、線維筋痛症、歯痛などの痛みと天気変化の関係について報告があります。

 2023年に私の監修でウェザーニューズ社が行った全国インターネット調査によると、天気の崩れで悪化する症状として、男女ともに頭痛と頚・肩こりが上位でした。私はこのような痛みを「天気痛」と名づけて、診療を続けてきました。最近は天気の変化が大きく異常気象が増えてきたこともあり、「天気痛」は一般社会でも注目されるようになってきています。

 

【天気痛のしくみは】

 

 天気が崩れるとなぜ痛みが強くなってくるのか、そのメカニズムのくわしいところは分かっていません。気圧が下がると関節が膨張して神経を刺激する説や体内の水分のバランスが崩れる説など、さまざまな意見がありますが、どれもエビデンスがはっきりしていません。

 一方で我々の研究で、天気痛の原因は気圧や気温の変化などのストレスによって交感神経が過度に優位になり、知覚神経や痛みのネットワークを興奮させてしまうことにあることが明らかになっています。その結果、痛みや体調不良などの天気痛の症状が引き起こされるのです。

 さらに研究を進めたところ、気圧の変化による天気痛は耳の奥にある内耳が気圧センサーとなって引き起こされることも分かりました。天気の変化を受けやすい人はこのセンサーが過敏になっていて前線や台風などで気圧が微妙に変化すると、敏感に反応して天気痛が起こりやすくなるのです。(くわしくは「ウェザーニュースHP・天気痛予報」をご覧ください)

1 2

この記事をSHAREする

RELATED ARTICLE