疾患ナビ 2024.12.16

理学療法士が教える肩こりに効く1日10分ストレッチ【1】

日常生活に支障をきたすことも多い肩の不調。「肩こり」や「五十肩」など、年齢を問わず、何らかの肩の痛み悩んだことのある人は多いでしょう。今回は、これら肩の痛みを予防し、不調を改善するための「1日10分ストレッチ」を理学療法士・福原隆志先生に伺いました。(以下、福原先生談)

 ストレッチをする前に、そもそも「肩関節」がどういうメカニズムで動いているのか確認しておきましょう。

 肩関節は、肩甲骨の丸いくぼみ(関節窩)に、先端がボール状になった腕の骨(上腕骨頭)が、すっぽりはまってできています。腕を肩からぐるぐる回してみれば、肩関節がひざや肘、首など他の関節に比べると、かなり可動域が広く、自由自在に動かせることがわかると思います。

 厳密に言えば、くぼみ(関節窩)にはボール(上腕骨頭)が1/3ほどしか収まっておらず、ある意味“宙ぶらりん“が普通の状態。肩関節は、実はもともと不安定な構造です。これを、肩や腕、背中など周辺の筋肉が協力し合って動かしているのです。

肩の不調には肩だけでなく、ほかの筋肉や体全体の姿勢なども影響する

 

 ところが、スマホとPCに向かう時間が多く、運動習慣の少ない現代人は肩周りの筋肉をうまく使えていない人が多い。あるいは加齢の影響で筋肉が硬くなっていたり、筋肉量が低下して正常に動かせていない場合もあります。

 しかし先ほどお話したとおり、肩関節は宙ぶらりんの状態で可動域も広いため、一部の筋肉だけを使って無理に動かすこともできてしまう。知らず知らずのうちに一つの筋肉だけを酷使しているうちに筋肉に痛みが出てきて……これが“五十肩”の症状につながるのです。

 また、「肩こり」は、肩を中心に首から背中まで、広い範囲にわたり張りやこわばりを感じる状態。長時間、同じ姿勢でいたり、猫背や前かがみなど不良姿勢や運動不足などの影響で起こります。主に首の後ろから肩・背中にかけてつながっている「僧帽筋」という筋肉が影響していることが多いですね。

 いずれにせよ、日常的に意識してストレッチをして肩関節周りをほぐしつつインナーマッスルを鍛え、痛みや不調を予防・改善していくのがベスト。ストレッチは以下の3つのポイントごとに行います。

 

痛み予防・改善のポイント

 

①「肩甲骨」を動かし、周辺の筋肉をほぐすストレッチ

肩甲骨を積極的に動かすことで、動きがなめらかになり、結果として肩の負担が減ります

 

②インナーマッスルを鍛えて「肩関節」を安定させる筋トレ

肩関節周囲の筋肉・靱帯の硬さや弱さの影響を受けやすいので、インナーマッスルを鍛えて安定させます

 

③脊柱、骨盤などの位置関係を整え「姿勢」を改善するストレッチ

 複合的に多数の筋肉が協力し合うには、全体の姿勢の改善が必須。腹筋、背筋、下肢のバランスを整え、肩甲骨~肩がスムーズに動くようにします

 

 第1回目は、①の「肩甲骨」にフォーカスしたストレッチ。肩甲骨周りを柔軟にし、肩への負担を軽減します。オススメのシチュエーションは仕事の合間や風呂上がり。気がついた時にサッと行いましょう。ただし、すでに不調が出ている人は、まず専門医の診断を受けてください。

 

胸張り・肩寄せストレッチ

 

1.背もたれのない椅子に座り、体の後ろで手を組む

2.背すじを伸ばして胸を軽く張り、グッと肩を引き寄せて5秒キープ

3.自然に脱力する

 

☆これを3回繰り返す

☆肩甲骨が動いていることを意識する

☆【ポイント】ストレッチの最中に息を止めないこと!

肩回しストレッチ

 

 

1.両手を横に伸ばしてひじを曲げ、指先で肩を触る

2.肩の付け根を中心に、できるだけ大きく円を描くようにゆっくり回す

 

☆息を止めずに前後10回ずつ行う

☆肩甲骨が動いていることを意識する

☆【ポイント】前側へ大きく動かすよう意識すると肩甲骨が動いて効果的

 

 

 

ボート漕ぎストレッチ(手を伸ばした状態からスタート)

 

 

1.椅子に座り、手のひらを上にしてひじを曲げ、しっかり胸を張る

2.親指を下に向け、腕を内側にひねりながら前に伸ばしてグッと背中を丸める

3.しっかりひじを引き、1の体勢に戻る

 

☆息を止めずに10回行う

☆肩甲骨が動いていることを意識する

☆手を伸ばしたとき、しっかり背中を丸めること!

取材・文◎田代智久 イラスト◎うえむらのぶこ

 

福原 隆志(ふくはら たかし)秋田リハビリテーション学院理学療法学科専任教員、博士(保健学)、認定理学療法士(スポーツ理学療法、臨床教育)、認定スクールトレーナー

島根県松江市生まれ。群馬県前橋市のクリニックにて臨床経験を積み、成長期の子供から高齢者まで幅広い世代の整形・スポーツ領域のリハビリテーションを行うかたわら、群馬スポーツリハビリテーション研究会の一員とし、地域スポーツで活動する理学療法士の育成に取り組む。2014年より秋田県に移住。秋田市の回復期病院で主に脳卒中のリハビリテーションに関わりながら、秋田県理学療法士会 障がい予防・スポーツ支援班の班長として地域スポーツをサポートしている。2020年より現職。理学療法士養成校の教員として後輩理学療法士の育成に従事しながら、「年齢や障がいの有無に関わらず、スポーツを楽しみながら健康になる地域づくり」を念頭に置きつつ、高齢者の運動教室などを積極的に行っている。趣味は子供達の部活動観戦と、日課である愛犬との散歩。

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