コラム 2019.05.22

2019年度運動器の健康・日本賞の受賞事業をご紹介します!

「運動器の健康・日本賞」は、毎年1回、運動器の健康増進活動に取り組んでいる団体や個人に応募いただき、その中から優れた活動に対して表彰する顕彰事業です。

 第7回を迎えた2019年度は、応募総数32件。2019年1月に審査委員会が開かれ、最優秀賞の日本賞1件、優秀賞2件、奨励賞5件が選出されました。

 そして、今年度、最優秀賞の「2019年度運動器の健康・日本賞」を受賞した北海道脊柱靭帯骨化症友の会の会長・増田靖子さんと、活動を実際に行った札幌医科大学附属病院リハビリテーション部・理学療法士の佐々木雄一に事業内容をご紹介してもらいます。

 

北海道のリハビリ過疎の現状

 北海道のイメージといえば、そう、とにかくデッカイ! 国土の22%を占めるほどの巨大な面積を有し、国内外から高い人気を集める日本屈指の観光地です。札幌や函館、小樽など夜景のきれいなスポットや、富良野のラベンダーなど季節の花々、知床、大雪山、水の美しい支笏湖や摩周湖などの大自然があり、広大な土地だからこそのさまざまな魅力があります。

 

しかし、面積が巨大ゆえに、悩ましいこともあります。ちなみに東西距離777.41㎞、南北467.3㎞、面積は8万3457㎢。この距離を移動するのは容易なことではありません。

 

問題になってくることの1つに医療問題です。まずは人口に対する医師の数。

 人口10万人あたりの「医師数の推移」について見ると、2000年になってようやく全国平均を上回るようになったというところ。しかし、この平均も、上の図の「北海道の2次医療圏における医師数」を見ると、地域によって偏りがあることがわかります。

 人口10万人当たりの医師数を見ると上川中部圏が最も多く、続いて札幌圏が多くなっています。この2圏域は医科系大学があるため医師数が人口に対して充足しているのですが、一方で、根室圏の97.0という数字は、全道平均の46.2% しかなく、医師不足が顕著な地域となっているのです。

 

「リハビリキャラバン」発動!

 

このような北海道の医療資源の偏りや移動距離の長さなどの不便さによって、リハビリを受けることが容易ではなく、状態を悪化させている難病患者・障がい者がたくさんいるという現状があるのです。

 

その現状をなんとかしようと「北海道脊柱靭帯骨化症友の会」による取り組みが2014年より始まりました。それは、札幌医科大学附属病院の理学療法士らとともに、リハビリ指導者不在の地域に出向いて家庭で無理なくできるリハビリ指導を実施するというものです。

 

同時に、地域の保健所、医療機関、福祉・介護事業所などと広汎に連携をとりながら、それぞれの地域に合った医療講演会、患者交流会などを行い、患者さんはもとより患者家族、住民に対して、リハビリ、難病・障がい者医療への啓蒙も行うという活動です。

 

この取り組みの当初は、「後縦靭帯骨化症」の患者さんを対象に行っていました。

「後縦靱帯骨化症」とは、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が

骨になった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす難病に指定された病気です。

 

 しかし、地域を回っているうちに「後縦靭帯骨化症」の患者さんだけではなく、それ以

外の難病患者さんや動けなくて困っている高齢者の方などが多数いることがわかり、対象者をこういう方々を含めて「ロコモティブシンドローム」の予防や改善を目的とした講演会、リハビリ指導をするようになりました。

 

リハビリキャラバンの成果と未来

 

 5年間のうちに全17市町村で、延べ23回開催し、約800人に参加していただきました。総移

動時間は片道で75時間にのぼります。

 

 この活動を通して、患者さんの通院の困難さを痛感するとともに、医療過疎地では、普

段の受診も大変なため、参加していただいた患者さん、患者さんをとりまく人たちから切実な質問を多く受けました。

 

 また参加いただいた方は、直接、理学療法士に質問をできるうえ、他の患者さんとの情報交換ができたと喜びの声も多数聞くことができ、患者さんやその周りの方々の孤立化を防ぐこともできる活動であることが認識できました。

 

 この事業を通して培われたネットワークも非常に大切になりました。そこで、今後もそのネットワークの維持、拡大をしていくために、医療過疎地での活動を継続していこうと思っています。とくに未開催地域での開催を実現し、北海道全域を網羅できるように取り組んでいきたいと思います。

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